水素の重要性の高まり
水素(H₂)の需要は、再生可能エネルギー源としての役割から世界的に拡大しています。
発電設備や自動車での利用が進む他、データセンターや航空関連施設などの重要設備にある蓄電池室でも水素が発生する場合があります。
通常の状態では、水素は無色・無臭・無味であり、毒性はありません。しかし、高濃度になると酸素(O₂)不足を引き起こし、窒息の危険があります。また、加熱されると非常に燃えやすく、高度な可燃性を持つため、重大な火災リスクとなります。

水素の危険性

水素に関連する危険としては、呼吸障害、設備部品の破損、着火、燃焼などが挙げられます。多くの場合、これらの危険は複合的に発生しますが、水素における主要なリスクは、可燃性混合気が形成され、それが火災や爆発につながることです。大気圧下における水素の最小着火エネルギーは約0.02 mJと非常に低く、きわめて着火しやすい性質を持っています。
さらに、水素は「水素脆化」と呼ばれる現象により、容器、配管、その他の構成要素に機械的損傷を引き起こす可能性があります。長期間水素に曝露されることで、一部の金属やプラスチックは延性や強度を失い、亀裂が生じ、最終的には破損や破裂につながる場合があります。
水素脆化の一形態として、化学反応によるものがあります。高温環境下では、水素が金属壁の成分と反応して水素化物を形成し、金属の結晶格子構造を弱体化させます。
信頼性の高い水素ガス・火炎検知システム
水素ガスは空気よりも軽く、蓄積が起こらない場所では検知が困難なため、しばしば検出・監視が難しいガスです。また、水素ガスは赤外線ガス検知技術では検出できません。建物内や閉鎖空間では、水素は素早く上昇します。水素漏れが着火した場合、水素炎は可視光や赤外線放射熱をほとんど発しないため、炭化水素火災と比べてさらに検出が難しくなります。このため、可燃性水素ガスおよび炎検知器は天井付近に設置され、一方で酸素(O₂)やその他のガスセンサーは作業者がいる床近くに設置されます。

MSAのガス・火炎検知システムには、高度なインテリジェントコントローラーも含まれ、クラウド対応で24時間365日の遠隔監視が可能です。また、消火システムへの警報通知機能も備えています。これらのシステムは、LEL(下限爆発濃度)およびppm単位の高精度ガス・炎検知技術を搭載し、広視野の光学式炎モニタリングによって危険な水素ガス着火事象を迅速に検出・警報・抑制します。
FL500-H2 UV/IR 火炎検知器
FL500-H2 UV/IR 火炎検知器は、水素炎から放射される紫外線(UV)および赤外線(IR)スペクトル範囲の放射を監視する専用機器です。 UV/IRの組み合わせにより、迅速な応答時間と誤警報に対する耐性が向上し、信頼性の高い保護を実現します。また、その他の炭化水素火災も検知可能です。
